■ 減災の三角錐(正四面体) ■
安全を目指す連携のかたち
火山はいつか噴火します。私たちの”人生せいぜい八十年”の間に直面するかは別として、何千年のうち(自然としてはごく短い年月)には、必ず噴火するといってまちがいはありません。噴火を止めることが出来ないとしたら、私たちに出来るのは、少しでも被害を少なくする「減災」への取り組みです。減災のために事前から取り組むべき事として、 一、火山活動の監視 二、災害予測地域の想定 三、緊急対策の立案と試行が挙げられます。そのためには、研究者が活動を予測するために正確な火山観測デ−タを取得し、行政が防災実務の立案と試行にあたる。また、報道機関が迅速に適切な情報を提供し、通常から防災意識の啓蒙を行う。これら、三者が連携することによって頂点の住民の安全が確保されるというのが「減災の三角錐」との考えです。 世界の火山噴火災害をみると、研究者の警告が行政に伝わらなかったり、伝わっても行政が混乱を恐れて避難を渋ったりして、多くの犠牲者を出したケ−スもあります。有珠山では、地元研究者や行政機関などの活動の蓄積で、一人の犠牲者もださずにすみました。
岩手山での実践
岩手県では、産学官連携のための研究・交流組織である岩手ネットワ−クシステム(INS)の、十年余りにわたる活動を背景に、一九九八年春に、「INS岩手山火山防災検討会」がスタ−トしました。防災関連機関が毎月岩手大学に集まり、三角錐の実践を進めています。テレビ・新聞など報道機関も参加し、住民の安全に関わる情報との視点で報道を行っており、また、監視カメラの情報を研究者・行政へ提供するなど、三角錐の一翼として大きな貢献をしています。勿論、公的な委員会や行政の対応も同じ考えに基づいて推進されています。
噴火が起きていない火山での、「減災の三角錐」の取り組みは岩手山が初めてです。まだ、不十分ですが、他の火山のお手本となるよう努力したいと願っています。 なお、小生は、住民の方々も三者と共に防災に主体的に携わり、頂点の地域の安全をめざす、「減災の四角錐」に展開すべきではないかと考え始めています。
6市町村広報 2000年12月掲載より