■ 規制緩和は共生への一歩 ■
火山性地震が頻発し昨年八月十八日から登山が規制された磐梯山では、地元三町村が独自に解除の方針を打ち出し、九月二十三日に規制が解除されました。火山活動の見通しも不明瞭で、安全対策も不十分な状態での緩和には疑問視する声があがっています。
岩手山では(東側の活動が現状レベル以上にならないならば)、七月一日から東側四ル−トの一時緩和をめざして対策が進められています。一方で、緩和は”遅きに失した、磐梯山を見習え”との意見もあると聞いています。
東側は切迫した状況にはないといっても、通常は年に数回程度の火山性地震が年間千回を越え、マグマの供給源とされる深部の地震は継続して発生しています。沈静化してはいないのですし、緊急時に下山には時間を要します。そのため、1.登山道への警報装置の設置など緊急連絡システムの確立、2.入山者への自己責任の啓蒙などの対策を具体化して、安全確保をめざしているのです。
法律上は、入山の規制も緩和も市町村長の権限です。しかし、首長が単独でその任を全うできないのは明らかです。そのため、「岩手山火山防災ガイドライン」では、防災の実務において国・県・市町村が連帯して責任を負うこと、関連機関が連携することを基本理念に明記し、それが実行に移されつつあります。
INSの会合では、既に昨春から緩和のための対策が真剣に協議されてきました。現地調査には周辺市町村と県が連携して取り組み、警報装置などの費用も登山道のある三町村へ県が補助しています。建設省等もさまざまな形で支援しています。また、最終的な方針は、行政機関・防災関連機関・学識者などからなる「岩手山火山災害対策委員会」が多方面から検討を行ない、決められたもので、当面考えうる最善の対応ではないかと小生は思います。
噴火の間隔が長い多くの日本の火山では、防災対応はほとんど進んでいません。「連帯責任」と「連携」を実践する岩手山は「岩手方式」として全国的にも評価されつつあります。規制緩和のための取り組みは、岩手山との共生を目指すまさに第一歩と位置付けられると思います。
6市町村広報 2001年2月掲載より