■ 有珠山にみる共生の姿 ■
(安全を確保し観光客を誘致)
・マグマの活動が終息して二年余が過ぎた有珠山を視察しました。泥流が橋を押し流し、噴石が住居を破壊した洞爺湖温泉裏の金比羅山噴火口近くは、復旧工事の最中で一般の方はなお立入禁止です。
一方、西山噴火口周辺では木道や防護柵など安全対策を整備、今なお白煙をあげる火口、断層で分断された国道、地殻変動で隆起し崩れ落ちた建物など目前で観察が出来るようになり、連日バスを連ねての観光客で、賑わっています。遊歩道入り口には休み処や土産物店が軒を連ね、NPOやボランティアの方が駐車場の管理や観光グル−プの案内役を担っています(但し、いづれも有料です)。六千人近くの住民を避難生活に追い込んだ噴火ですが、今は逆に活発な噴気が出来るだけ長く続くよう願われているのです。もちろん、災害の爪痕は消えたわけでなく、閉鎖されたままの宿泊施設やレストランも目に付きます。また、おそらくは二十年後に繰り返すであろう噴火に対し、どのような街つくりをすべきかなど課題がないわけではありません。しかし、出来るだけの安全策をこうじて観光客の誘致を図る、火山との共生の先輩格のしたたかさを強く感じました。
(入山規制緩和二年目の岩手山は)
岩手山では、10月14日に今年度の東側四ル−トの入山規制の緩和を終了しました。幸い、緩和期間中に火山活動は急変せず、緊急通報装置を作動させることもなかったことに、感謝しています。課題とされた下山カ−ドの提出率は、8月までの記録では95%を越え若干の改善をみました。人感スピ−カ−の設置などの効果はあったのかもしれませんが、強制力のない呼び掛けではこの数字が限界とも考えられます。噴気がなお活発な西側での水蒸気爆発の可能性の評価、リスク(危険性)が通常のレベルにまで低下した際に西側解禁に向けて必要な対策は何か、いづれ全山が沈静化といえる時期が来ることを念頭に今から進めておくべき共生への取り組み等、課題は山積です。出来る限りの安全対策をこうじ、情報を開示し、観光客の集客をはじめ地域振興を図るとの「共生への体制づくり」が、改めて検討されなければなりません。
6市町村広報 2002年11月掲載より