■ 2002年2月以降の岩手山の表面現象の所見 ■ 

 第91回「火山噴火予知連絡会」(2002年2月1日)以降、ヘリコプターによる機上観測は以下のように行われた。
 
   2002年2月13日、県防災ヘリ「ひめかみ」、機上観測(国土地理院がREGMO点検のため稜線部着陸)、黒倉山山頂噴気強くランク7程度
   2002年3月14日、県防災ヘリ「ひめかみ」、機上観測、降雪後で噴気孔はほとんど雪に埋もれている。黒倉山山頂・大地獄谷など噴気弱め
   2002年3月19日、自衛隊ヘリ、機上観測、黒倉山山頂・大地獄谷など噴気弱め
   2002年4月11日、県防災ヘリ「ひめかみ」、機上観測、全般に噴気弱めだがF3から断続的に吹き上がる 
   2002年4月28日、県防災ヘリ「ひめかみ」、機上観測、全般に噴気弱め、御苗代湖は湖面が融け始めてきたが、泥の巻上げなど変化は見られない

 テレビ岩手、岩手めんこいテレビの監視カメラのビデオ映像の解析は、岩手大学で継続的に行われている。

 「西側での表面現象」
 監視カメラのビデオ映像の解析による大地獄谷の噴気ランク(1日での最高ランク)は、2001年10月から2002年2月にかけ、6〜8と強い状態が続いていたが、2月下旬以降はランク3〜6が多くなり、4月にはほとんど4以下と低下している。気温の上昇で見かけ上弱めに見える可能性、周期的な変動の可能性もあるが、2001年3月・4月はランク5〜7で強めで推移していた経緯もある。主噴気孔周辺の硫黄の飛散は2000年1月、2001年1月とも広範囲におよび、鮮やかな黄色を呈していたが、その後弱まり2002年1月には噴気ランクは5〜8と高いものの、機上から飛散は認めにくい状況にある。同年4月の機上観測でも飛散は尖塔周辺に限られており、全般的に大地獄谷の活動は低下の兆しがあるとも考えられる。2001年8月28日の東京工業大学の調査では、大地獄谷噴気孔の噴気温度は136度で、ガス成分とも1998年観測開始時の状態に戻りつつあるとされており、今年度の火山ガス調査の結果で、変化の傾向がより明瞭になるかもしれないと期待している。
 黒倉山山頂の噴気は、2002年2月3日に高さ約300mと過去最大級の高さになったのをはじめ、2月13日の機上観測時にも150m以上に立ち上がるのが現地で確認されているなどしばしば強い状態が観測された。しかし、3月から4月にかけて低下の傾向が続いている。
 今冬の積雪時の機上観測で、黒倉山〜姥倉山北斜面のF3から稜線部にかけて新たな噴気孔群(断層と斜交)が認められた。また、F4に沿って姥倉山方向の樹林地帯に噴気孔が連なっているのが機上から確認(柏台観測点からは1994年に既に確認されている)された。しかし、黒倉山〜姥倉山の表面現象の急激な拡大はほぼおさまりつつある。岩手県の地温計の観測でも、稜線部の地温は96度台と高いものの、姥倉山方向での地温の上昇も鈍っており、西側での表面現象の拡大は右肩上がりから頭打ちの傾向に移行しつつあるように見受けられる。

 「東側での表面現象」
 4月28日の機上観測では、ほとんど雪は消えており、南東火口壁で弱い噴気が立ち上がってるのが確認されている。この噴気は従来からのもので、4月26日以降の東側やや深部での火山性微動や低周波地震の頻発に係わるような表面現象の変化はみられない。
   

文責:斎藤徳美  「第92回 火山噴火予知連絡会資料」より


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