■ paper ■

岩手山の火山防災における物理探査の活用


  斎藤 徳美  ・  山本 英和  ・  佐野   剛
岩手大学工学部

Applications of Geophysical Explorations for Preventing Volcanic Disasters at Mt. Iwate


Tokumi SAITO, Hidekazu YAMAMOTO,and Tsuyoshi SANO

Abstract

Around Mt. Iwate, volcanic earthquakes have frequently occurred since 1998. Many instruments have been temporally set up to monitor the volcanic activity. On the other hand, some techniques on a geophysical exploration had been applied to clarify the underground structure beneath the volcano or to know what occurs inside the volcano. The explorations were mainly as followings: estimation of hypocentral region of volcanic tremors by using seismic arrays, estimation of 3-D velocity structure of P-wave and estimation of attenuation region of P-wave by an exploration using artificial explosions.
Geophysical explorations had been generally done at other volcanic areas by limited experts. Therefore, the results had been rarely disclosed in order to prevent disasters. At Mt. Iwate the geophysical explorations were done with the understandings of the residents and under administrative supports. The results were announced to local community in an easy-to-understand way through local meetings made by academic, business and governmental circles or through local news media. The results suggested us to guess what occurred beneath Iwate Volcano and gave an important guideline to measures for safety to relax the regulation for stopping to climb Mt. Iwate.
When we had executed above processes, we recognized that joint responsibility and cooperation among organizations on disaster preventions were important to utilize a geophysical exploration technique for preventing volcanic disasters. Many people who live around the volcano have recognized that geophysical exploration techniques are accessible to contribute regional disaster prevention.

1、緒 言
2、減災の三要素と物理探査の関わり
3、岩手山の活動と防災対応の経緯
4、岩手山における物理探査
4、1 火山性微動の震源探査
4、2 人工地震による山体構造探査
4、3 人工地震による地震波減衰域の探査
5、 物理探査の火山防災への活用
5、1 岩手山に起きている現象の掌握
5、2 入山規制の緩和に必要な対応
5、3 火山との共生のための情報の共有と啓蒙
6、 結  言
謝  辞

参考文献

1、緒 言

 岩手山では1998年3月頃から火山性地震が頻発し、噴火の可能性が指摘された。岩手山では1732年の焼走り溶岩流の噴出以降、約270年間本格的な噴火が起きていないため、当時、住民および行政には、岩手山が”生きている火山”であるとの認識が欠如し、防災対策も皆無の状況にあった。
 気象庁、東北大学などが、何が起きているのかを掌握すべく緊急に観測機器の整備をはかった。また、岩手大学や防災関係機関が連携して、被害予測の検討を進め「岩手山火山防災マップ」を作成、また、わが国で初めての、噴火時から復興までに何をなすべきかの指針を示した「岩手山火山防災ガイドライン」を策定した。さらに、防災知識の啓蒙、避難訓練の実施など多様な防災対策を行なってきた。
 これらの対応が有効に機能するためには、火山活動の現状についての正確な認識と今後の予測が不可欠である。しかし、有珠山などのように噴火周期が短く、過去の観測デ−タや噴火記録などに基づく予知が可能な火山はわが国でも例外的である。岩手山では、過去の噴火時の観測デ−タは皆無に近く、監視デ−タの解釈の礎となる山体内部の構造もほとんど解明されていなかった。そのため、火山性地震や地殻変動などのいわば受動的な火山観測のほか、大規模な人工地震による構造探査など能動的な物理探査の手法を積極的に活用し、活動の実態や今後の見通しの検討を行い、防災対応を行なうこととした。
 一般に、物理探査の実施、解釈には高度な専門的知識を要するものであり、従来、探査結果は研究者の領域に止まり、地域防災の実務を担う行政関係者や地域住民に広く知らしめることが多かったとは言いがたい。筆者らは、防災関係機関や報道機関と連携して調査を実施すると共に調査結果やその結果から推測される火山活動の推移についての認識を共有し、また、地域住民にもその成果の周知をはかった。
 火山防災において、防災関係者や住民が防災の基礎となる当該火山の特性を理解することは、研究者の観測情報の意味するところを正しく解釈して適切な対策を実施し、また、住民が自らの命を自ら守るべく判断能力を培う上で重要である。一方で、物理探査が身近な生活に密着した有効な技術との理解を広めることは、今後の物理探査の発展や新たな需要の喚起に役立つものと考えられる。
 本論文では、火山活動が活発化した岩手山において、筆者らがその理念を模索し実践した、物理探査技術の地域防災への活用の在り方について報告する。
 

2、減災の三要素と物理探査の関わり

 
火山の噴火を防ぐことが現状では不可能である以上、我々に出来ることは被害を出来るだけ少なくする”減災”への取組である。減災のための有効な対策は、@火山活動の監視、A災害予測地域の想定、B緊急対策の立案と試行、の三要素とされている。噴火が、いつ、どこで、どのような形態で、どの程度の規模で発生するかが予知され、またその結果生ずるであろう災害の規模や区域が推定されれば、被害を少なくするための対策の立案が可能となり、訓練や試行により災害の軽減を図ることが出来る。
 火山活動の監視のためには、地殻変動、地震、重力、地球電磁気などの観測、熱的モニタリング、リモ−トセンシングなどの手法によるモニタリングが一般に行なわれる(大湊、2001)。これらは、マグマの移動など自然発生的な現象の観測を主とするものであるが、人工的に現象を発生せしめて観測を行なう多くの物理探査の手法とは表裏一体とでもいうべきものである。岩手山でも、上記手法はほとんど採用され、監視が行なわれている。 しかし、噴火の予測に監視記録をより有効に役立てるためには、火山の山体構造が詳細に把握されていなければならない。例えば、火山性地震の震源精度の向上には、山体内部の地震波速度構造の把握が不可欠なのである。また、マグマの位置や移動の状況の検知が可能であれば、噴火の位置や時期をより正確に予測することが可能となる。物理探査の技術が貢献しうる守備範囲は多岐にわたると考えられるものの、その技術が十分に適用されているとは言いがたい。
 災害予測地域の想定は、過去の噴火による災害が掌握されている噴火周期の短い火山では、比較的容易である。しかし、周期が何百年以上と長い火山では、噴火を経験した住民もおらず、詳細な災害状況の記録も残されていない場合が多い。その場合は、地質学的手法による噴火履歴の解析や古文書の記載に基づく解析などから、過去の噴火形態を推定する。そして、発生する可能性が大きい噴火の規模や位置を仮定し、現地形デ−タを基にコンピュ−タによるシミュレ−ション解析を行なうことによって、被害想定を行なう。過去の噴火履歴の調査には、山体構造を解析するための人工地震探査や深部ボ−リングが有効であるが、一部の火山に限られている。   岩手山では、活動が活発化した1998年以降に、後述する人工地震探査やトレンチ調査が繰り返し実施された。岩手山火山防災マップは従前の噴火史調査に基づいて作成されており、それらの成果は反映されていないが、今後の防災マップの見直しや、モニタ−記録の解析精度の向上に大きく貢献するもとの期待される。

3、岩手山の活動と防災対応の経緯

 
岩手山では1995年9月にマグマの活動に係わるとされる火山性微動が長時間観測され、研究者の間で注目された。2年半後の1998年3月頃から火山性地震が頻発し始め、同年4月29日には1日に285回の火山性地震が発生し臨時火山情報第1号が発表された。同年6月24日には、噴火の可能性の指摘を含む臨時火山情報第2号が出された。そのため、当時、県が設置した「岩手山火山活動対策検討会」の助言をもとに、岩手県と岩手山周辺6市町村(盛岡市、雫石町、滝沢村、玉山村、西根町、松尾村)の首長が協議し、同年7月1日の山開きから岩手山のほぼ全域で入山が禁止されることとなった。
 岩手山では、1686年に大規模な山頂噴火が発生し、1732年には焼走り溶岩流が噴出している(土井、2000)。しかし、それ以降大きな噴火を起こしておらず、今回の活動は約270年ぶりの本格的な活動に発展する危惧の念を抱かせた。
 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−や気象庁などが監視体制の整備を図る一方で、地元の産学官連携組織である岩手ネットワ−クシステム(INS)が強力なリ−ダ−シップを発揮し、「岩手山火山災害対策検討委員会(委員長、斎藤徳美)」「岩手山の火山活動に関する検討会(座長、同)」などの公的な組織の立ち上げを後押しするとともに、ボランティア組織である「INS岩手山火山防災検討会」で関係機関の連携を図った。
 岩手火山群はFig.1に示すように東西約13kmにわたって25以上の小火山から構成されており、東経141度線付近を境にして、過去約6千年前以降に活動を開始しマグマ噴火を繰り返す東岩手山と、縄文時代以降は水蒸気爆発しか発生していない古い山体からなる西岩手山に大別されている(土井、2000)。そこで、東側でマグマ噴火、西側で水蒸気爆発という二つの噴火形態で想定される被害予測を示した「岩手山火山防災マップ」を緊急に作成した。さらに、我が国で初めて、火山での異常発生時から噴火時さらには復興期までに必要な防災対応の指針を取りまとめた「岩手山火山防災ガイドライン」を策定した。そして、必要な対策を出来るところから実行すると共に、避難訓練、住民説明会、シンポジウムなどの啓蒙活動などを実践的に行なってきた(斎藤、1999;斎藤、2001)。
 火山性地震の回数は1998年8月頃から減少に転じたが、同年9月3日には雫石町長山で震度6弱の地震が発生した。この地震は活断層によるもので(越谷・他、1998)、岩手山西側で発生している火山性地震とは異なるものであるが、火山活動が活発化しているなかでの被害地震の発生は住民に衝撃を与えた。2001年以降、月あたりの火山性地震の回数は100回以下で推移している。また、1998年2月頃から顕著であった山体の南北への伸張も、2000年以降はほとんどみられなくなり、2001年後半からは収縮に転じつつある(東北大学大学院理学研究科、2002)。この間の火山性地震や地殻変動などの観測結果および発生のメカニズムなどに関する検討結果については、Miura,S.,et al.,2000、Nishimura,T.,et al.,2000、植木・三浦、2002 および Tanak,S.,et,al.,2002 などに詳しく報告されているので参照されたい。なお、山頂(薬師火口)での表面現象などは、地震や地殻変動などが顕著になる以前と変化はなく、2002年8月現在、東側でのマグマ噴火は切迫した状況にはないと考えられている。
 一方、1999年5月以降、西岩手山の大地獄谷、黒倉山、姥倉山一帯では、笹枯れや新噴気孔の出現といった表面現象が活発化し始めた。東西約1.8km、南北約700mと広範囲で、200箇所をこえる噴気孔が確認されている。黒倉山山頂の噴気はしばしば高さ200mを越え、Fig.2に示すように活動は活発なまま推移している(土井・他、2001;土井、2002a;土井、2002b)。1999年10月18日の火山噴火予知連絡会で水蒸気爆発の可能性が指摘され(第82回火山噴火予知連絡会、岩手山の火山活動に関する統一見解)、2002年5月の同連絡会でもその見解は撤回されていない。
 後述するように、2000年10月に実施された岩手山人工地震探査の弾性波トモグラフィ解析から、岩手山内部の3次元弾性波速度構造が明らかにされた(田中・他、2001)。その結果に基づく火山性地震の震源分布や地殻変動解析から、1998年2月から4月と8月に浅部までマグマが上昇したと推定されている(佐藤・浜口、2001;田中・浜口、2001)。西岩手山における広範囲な表面現象は、マグマの熱で加熱された蒸気、熱水が上昇することによりもたらされているものと考えられる。
 その後、マグマの活動は小康状態にあると推測される。しかし、浅部までマグマの通路ができている以上、もし次の貫入があった場合には短時間で噴火に至る可能性があり、注意深い監視の継続が必要である。2002年8月現在、大きな地殻変動などは観測されていないものの、2001年11月には3年ぶりにモホ面付近での低周波地震の回数が27回と月に20回を越え、また2002年4月には、山頂東側数〜10kmとやや深部で火山性微動が6回(2001年は年間で3回)、同4月30日には同じやや深部で低周波地震が1日に39回観測されるなど(盛岡地方気象台、2001:仙台管区気象台、2002)、活動はさらに長期化する可能性が示されている。
 この間、噴火が切迫していないと考えられる東側について、気象台からの適切な火山情報の発表、山頂を含む登山道11箇所への緊急通報装置による情報伝達システムの構築、登山者への自己責任の啓発を3本柱とする安全確保の体制を構築し、2001年7月1日から10月8日の体育の日までの間、4登山道の一時入山規制の緩和が実施された(斎藤・岩手山登山者安全対策協議会、2001)。沈静化していない火山での、安全体制の構築のもとで地域振興の道を探る火山との共生の試みは、約27、000名の登山者が入山し、事故なくシ−ズンを終えた。2002年も7月1日から10月14日の体育の日まで、同様の入山規制の緩和が行なわれている。
 なお、岩手山の火山活動の推移を示す指標として、1998年2月以降の東北大学松川観測点での地震回数および1999年5月以降の黒倉山山頂の噴気の強さ(松尾村柏台土井宅観測点)の変化をFig.2に示す。また、1995年以降の岩手山の火山活動と防災対応の経緯を、Table 1に示す。

Figure 1 Location map of Iwate Volcano. Iwate Volcano consists of 25 volcanoes in a narrow13 km long in EW direction.

Photo. 1 West side of Mt. Iwate. West Iwate caldera is located at the west side of the summit of Mt. Yakushi-dake and at the east side of Mt. Kurokura, and is located at the area between Onigajo and Byobuone.

Figure 2 Time variations of frequency of earthquake occurrence around Iwate Volcano from Feb. in 1998 to June 2002. Left axis indicates number of earthquakes per day, and right axis indicates cumulative number of earthquake. Insert figure indicates the time variation of rank of fumes at the summit of Mt. Kurokura from May in 1999 [after Doi, 2002b].

4、岩手山における物理探査
 岩手山では、今回の火山活動の活発化以前から、東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−が周辺に5箇所(1999年11月にさらに松尾観測点を開設)の固定観測点を設置し、地下300m程度の孔底で、地震計、歪み計、傾斜計などの観測を継続している。火山性微動が観測された1995年以降、同センタ−、気象庁、国土地理院などが臨時観測点を増設し、現在30箇所以上に、地震計、空振計、GPS(全地球測位システム)、APS(光波測距)、磁力計、重力計、地温計などが設置されている。これらの観測は、マグマ、熱水、蒸気などの移動やそれらに伴う地震や地殻変動から火山活動の実態を明らかにすると共に、火山防災に資することを目的に行なわれているものであり、物理探査の分野との認識がされていないものの、いわば「火山活動の物理探査」と位置付けられる。Fig.3に東北大学の観測点を例示するが、IWT(岩手、姥屋敷)、MTK(松川)、ANS(相ノ沢)、YKB(焼走り)、GNB(玄武洞)、MTO(松尾)の5箇所は定常観測点である(東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−、2000)。
 一方で、人工的に信号を発生させたり、物理探査技術を火山に適用するといった意味において、物理探査と認識される手法も実施されている。その主なものは、地震計のアレ−配置による火山性微動の震源探査、人工地震による山体構造の探査およびフラクチャ−ゾ−ン(地震波減衰域)の探査などである。

Figure 3 Observation sites set up by the Research Center for Prediction of Earthquakes and Volcanic Eruptions, Graduate School of Science, Tohoku University. Solid circles indicate observation points for earthquakes, open squares indicate ones for tilt and strain, open circles indicate ones for GPS, pluses indicate ones for magnetic force, and crosses indicate ones for gravity. MTK, MTO, YKB, IWT, ANS and GNB indicate permanent stations, respectively.

 
4、1 火山性微動の震源探査
 岩手山では、火山性地震の頻発とともに火山性微動も多発するようになり、1998年6月に9回、7月に32回、8月に25回の微動が観測された。1998年には合計103回を数えたが、その後減少し1999年には19回となっている(仙台管区気象台、2002)。
 火山性微動の発生のメカニズムは明確にされていないが、マグマや熱水などの流動が関係し、火山活動が活発な状況を反映するとされていることから、その震源を知ることは活動の現状を把握し今後の推移を予測する上で重要である。しかし、火山性微動は初動が不明瞭であるため、通常の地震観測の手法では震源の推定が困難である。そこで、1998年7月から、岩手山北山麓の松尾村の県民の森で、3成分地震計10組によるアレ−観測を東北大学と岩手大学が共同で行なった。そして、振幅が大きい火山性微動について、センブランス解析を適用し、火山性微動の到来方向および見掛け位相速度を求めた(Yamamoto et al.,2000)。
 Fig.4に解析結果の例として、1998年7月26日午前3時23分(T)、同年7月31日午前4時20分(U)および同年8月6日午前1時48分(V)に発生した微動の到来方向を示す。到来方向は黒倉山方向および西岩手カルデラの方向を示している。また、微動の発生源を山体内部と仮定し、観測点での微動探査で求められている地下速度構造(Yamamoto et al.,2000)に基づき、発生源の深さを求めると、これらの微動の震源は、地表から約1〜2km程度の浅部との推定がなされる。
Table 1 A history on volcanic events with regard to Iwate Volcano and the response for previously preventing volcanic disasters. Note that the contents of the table are written in Japanese.

 
4、2 人工地震による山体構造探査
 人工地震による山体構造探査は、国の第6次噴火予知計画の火山体構造探査として、東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−の浜口博之教授らを中心に、東北大学、岩手大学など12大学と気象庁から約75名が参加して実施された。岩手山を中心に、約30km四方の区域に、地震計330台を臨時に設置し、既存の観測点と合わせて約350箇所で、9箇所の爆破点からの地震波を観測した。Fig.6に爆破点と観測点の位置を示す。爆破は約50mのボ−リング孔底に200kg又は250kgのダイナマイトを用いて、2000年10月19日午前1時01分50秒から10分間隔で実施、好天にめぐまれて良好な記録が得られた(田中・他、2001)。
 解析の結果得られた岩手山内部のP波速度構造の平面図(海抜0km)とA−A’東西断面図をFig.6に示す。最も顕著な特徴は、平面図に青色で示された西岩手カルデラ直下の高速度体(Vp>5.4km/s)である。垂直断面図に示すように、高速度体は柱状構造をなし、垂直に2km突き上げ、カルデラ直下の海抜0kmの深さで側方に広がっている。
 第2の特徴として、やや速度の速い区域(4.4<Vp<4.6km/s)が、緑色で示すようにカルデラの周辺に存在する。カルデラの西側では、やや速度の速い区域は2km以上の厚さがあり、海抜下1kmのやや低速度層(黄色の区域)を取り囲んでいる。さらに、薄い舌状のやや高速度層が、カルデラ直下の高速度層から北東側山腹の下に広がっている。火山の西側とは対照的に、山頂および東側山腹は橙色示した低速度(Vp<4km/s)の物質が厚く覆っている。
 このように、岩手山のP波速度構造は、西側では地表下ごく浅部まで高速度層が存在し、山頂を含む東側では地表から深部まで低速度層が厚く覆うことで特徴づけられる。地質学的に、西側での火山活動は約30万年前に始まり約3万年前に終息したとされており、カルデラ直下の高速度層は、古い西側火山体の中心部分と解釈される。これに対し、山頂を含む東側山体は3万年前以降に形成され、歴史時代にも活発に活動していることから、東側を覆う低速度層は新しい未固結の火山噴出物から構成されていると推定される(Tanaka et al.,2002)。

Figure 4 Arrival directions of volcanic tremors estimated from an array observation. An open circle indicates the array site. The arrival directions point at the directions of Mt. Kurokura or West Iwate caldera.

Figure 5 Shot and receiver points used for the exploration using artificial explosions in 2000. Stars indicate shot points, and solid circles indicate receiver points.

 4、3 人工地震による地震波減衰域の探査
 2000年10月19日未明に実施された、岩手山人工地震探査の際の地震波を用いて、ファンシュ−ティング解析を行い、岩手山内部のP波減衰域を推定することを試みた。ファンシュ−ティング解析は、爆破によって発生した地震波を、ほぼ一列に配置した観測点で観測するもので、ある領域にマグマや破砕部分が存在するとそこを通過した地震波は減衰することが予想される。
 人工地震探査で地震計を設置した観測点は総数330地点(既存の設置点を合計すると約350点)であるが、本解析には岩手山を挟んで東西にならび、観測点間隔500mである、南側31測点(S1~S31)、および北側28測点(N1~N28)を用いた。
 爆破点からの震央距離による減衰を補正するために、全観測点を用いて距離減衰式を求めた。そして、各観測点の初動振幅に対して距離減衰式を用いて正規化し、山体を通過した相対初動振幅値を同一測線上で比較し、初動振幅値が0.2以下まで落ち込んでいる領域を減衰域とした。Shot1、2、4および7から求めた減衰範囲の交差する区域を減衰域とすると、減衰域はFig.7に示すように、西岩手カルデラ内に位置した。また、4.2で明らかにされた速度構造をもとに、各爆破点からの地震波がP波減衰域を通過する波線経路から、減衰域の深度を求めると、海抜+0.5~−1.5Kkmとごく浅部に位置することが推定された(長濱・他、2001)。
 また、Shot.7を爆破点とする人工地震探査は、1999年6月25日未明、同年9月30日未明および2001年10月12日未明にも実施されているが、減衰域はほぼ同様の位置で、広がりにも大きく変化していない(長濱・他、2002)。

Figure 6 P-wave velocity structure beneath Iwate Volcano obtained from seismic exploration. A high velocity anomaly had been intruded beneath West Iwate caldera [after Tanaka et al.(2002)].

5、 物理探査の火山防災への活用
 5、1 岩手山に起きている現象の掌握
 
岩手山はわが国最大級の成層火山である。西岩手山での浅部での火山性地震の頻発、山体の南北への伸張などの観測デ−タから、当面、大地獄谷から黒倉山、姥倉山一帯での水蒸気爆発の可能性が指摘されたものの、岩手山の地下で何が起きているのかは不明瞭であった。人体をCTスキャンで透視するように、山体の内部を詳細に知ることは不可能である。噴火前に設置された観測機器多さからいって、わが国で最も観測網が充実した火山といわれているものの、巨大な山体からするとその密度はまばらである。また、解析された火山性地震の震源も、山体内部の速度構造の詳細が明らかでない以上、誤差が含まれることはまぬがれ難い。マグマはどう動いたのか、いまどこにあるのか、推定の域をでない議論が地元研究者の間で繰り返された。
 火山活動の観測と防災情報を発進する公的な機関は気象庁である。また、火山噴火に関する高度な検討機関は、気象庁長官の私的な諮問機関である火山噴火予知連絡会である。これらの機関は、火山モニタ−観測に基づく活動の現状に関する情報は提示するものの、地元防災機関や住民が最も知りたい、今後何が起きる可能性が大きいのか、防災対応として何をなすべきかといった切実な課題には言及しないのが一般的である。
 岩手県では、「実務的対策は国・県・市町村が連帯して責任を負う。地域の安全は、行政機関・防災機関(特に報道機関もその一翼を担う)・学識者・住民が連携してそれぞれの役割を遂行することによって、初めて守られる。」との理念が岩手山火山防災ガイドラインの冒頭に掲げられている。災害対策基本法上は市町村の首長がその権限を有する避難の勧告に関しても、知事が判断し助言することと明記されている。その一方で、盛岡気象台長をも含む岩手山関係の研究者で構成する「岩手山の火山活動に関する検討会」が、予知連の見解をも踏まえつつ、防災関連機関に噛み砕いた助言を行なう体制が構築されている。
 火山性微動の発生のメカニズムは明確ではないが、マグマあるいは熱水などの流動が関係している可能性が大きいとされている。それ故、火山性微動の震源域が推定されることは、火山活動の活発な区域が西岩手か東岩手かを知る上で重要な示唆を与えた。地震波減衰域が大地獄谷周辺の地下に存在することは、西岩手山での表面現象が活発であることと整合的であった。大地獄谷の火山ガスが亜硫酸ガスや硫化水素を含みマグマ起源であるのに対し、すぐ西側の西小沢、黒倉山、姥倉山一帯の噴気がほとんど水蒸気のみからなり、地下の熱水貯留層を経由したものであるとの対比がなされた。また、水蒸気爆発が起きるとすると、過去の事例と同様大地獄がもっとも可能性が大きいことを推測させた。
 人工地震による構造探査により、西岩手カルデラの直下に高速度層の突き上げが認められ、過去のマグマの貫入の道筋が明らかになった。山体内部の一様でない速度構造が明らかになったことで、より正確な火山性地震の震源分布が求められた。震源の時系列的変化や地殻変動解析から、マグマが1998年2月〜4月に山頂付近の深部から上昇し西側に移動したこと、同年8月にも西岩手カルデラの浅部にまで貫入があったとのモデルが提示され、岩手山の今回の火山活動の経過がほぼ明確にされた。1999年以降の西岩手山での笹枯れや噴気群の出現など表面活動の活発化は、マグマの貫入後約1年を経過して熱が地表にまで達した事によると解釈された。
 一連の火山活動の全貌が判明したわけではないが、東側でのマグマ噴火は切迫した状況にはないこと、西側での小規模な水蒸気爆発の可能性があることなどの現状認識の妥当性が、推定された火山活動の推移からも裏付けられたことは、有効な成果と考えられる。

Figure 7 Attenuation region of P-wave beneath Iwate Volcano estimated by fan-shooting analysis. The attenuation region was estimated at depths between 0.5 km and -1.5 km above sea level beneath West Iwate caldera.

 
5、2 入山規制の緩和に必要な対応
 岩手山では、地震活動や表面現象が活発化して以降、噴火など実災害が発生しないまま3年以上を経過した。この間、山麓のスキ−場の休止があいつぐなど、地域の経済などに与える影響を危惧する声も大きくなりつつあった。
 火山性地震の発生回数は西岩手山を主に減少しつつあったものの、マグマの供給源とも推測されるモホ面付近の地震は継続して発生し、また、東側やや深部6〜10km付近での地震もコンスタントに発生している。少なくとも今回の一連の活動が活発化する以前のレベルには低下しておらず、よって沈静化宣言も出されていない。その状況の中で、一定の安全対策を講じた上での規制緩和、いわば火山との共生の模索が求められる事となった。 地殻変動解析によるマグマ貫入プロセス、人工地震によって求められた地震波減衰域に顕著な変化がないことなどから、1998年以降新たなマグマの貫入は生じていないと考えられ、東側でのマグマ噴火は切迫した状況にはないと判断された。東側やや深部での火山性微動や低周波地震の継続した発生は気掛かりで、もし、新たなマグマの貫入が生じた場合には、すでにマグマの通路が形成されていることからして、短時間で噴火に至るとの危惧の念も捨てきれない。しかし、その場合でも、噴火に至る場合には、震源の浅部への移動、地震や微動の規模の増大などの現象を事前に掌握し、入山者の安全を確保することが可能と考えられた。それらの状況を勘案し、第3節に述べられた安全対策が構築され、東側4登山道の入山規制が緩和された。
 必要な安全対策の見極めがなされ、入山規制の緩和が実施されたのは、活動の経過や再び危険な状況に至る兆候の把握が、物理探査や火山活動のモニタ−から可能とされた事によるものであり、火山との共生に物理探査が担う役割が大きいことが実証されたといえる。
 
5、3 火山との共生のための情報の共有と啓蒙
 岩手山では、産学官の研究交流組織である岩手ネットワ−クシステム(INS)に、1998年5月から「岩手山火山防災検討会」が立ち上げられている。ほぼ毎月1回岩手大学に関係者が集い、忌憚のない意見交換が行なわれ、公的な委員会などをサポ−トすると共に、実務的に火山防災を推進する役割を果たしている。参加者の所属機関は、付録に示すように40機関余に及んでいる。火山活動の現状に関する認識の共有化の他、各機関の防災対策の進展状況や相互に連携すべき対応についての忌憚のない協議がなされ、危機管理体制においてもっとも重要な”ひと”と”ひと”とのネットワ−クが形成されてきた。
 専門的な火山観測や構造探査は、研究者、技術者など限られた集団で遂行されることが一般的である。岩手山では、INS火山防災検討会で、その意義や手法から、どこまでわかるのかという技術の範囲などもわかりやすく説明を行い、一方で関係機関により調査への様々な協力がなされた。岩手山は国立公園区域に含まれているが、地震計の設置などにあたっては、環境庁、森林管理署など許認可の面で、理解を戴くことが出来た。岩手大学が火山性微動のアレイ観測を実施した県民の森は、岩手県の管理区域であり、観測を岩手県と岩手大学との共同調査という形で実施し、地震計の設置に関しても速やかに許諾を得ることとなった。1998年4月の火山性地震の頻発と共に多発した西岩手山の火山性微動の発生源の解析は、通常ベ−スでの許認可を待っては出来なかったかもしれない。
 2000年の人工地震構造探査は、当初、国の予算の制約から6箇所の爆破点で実施されることとなっていた。しかし、より詳細な解析にはさらに3地点での爆破が望ましいとされ、県がその費用を分担する共同観測の形で実施された。また、岩手山では観光用の道路などは整備されておらず、山麓から山頂部にかけての地震計の設置や回収は人力に頼らざるをえない。そのため、県の防災ヘリコプタ−「ひめかみ」が地震計の設置や回収にあたるクル−を9号目(不動平)や姥倉山−黒倉山分岐などに航送し、観測に多大な便宜を供した。
 岩手県は、岩手山の火山活動に関する検討会の提言をもふまえ、水蒸気爆発の可能性が指摘された黒倉山から姥倉山の稜線部に、地震計2台および地温計5台を設置し監視の一翼を担っているが、県が火山観測に独自の計器を設置している事例は少ない。これらの対応については、県の高官がINS等の交流を通じて、火山監視の重要性の認識を培っていたことによるものである。
 テレビや新聞など報道機関も観測の遂行には多くの貢献をなした。地域に観測の意義や手法についてわかりやすい報道をしてもらうべく、事前の説明会を実施し、探査もすべて公開とした。人工地震の爆破現場には、テレビ6社、新聞8社の関係者数十人が取材に集まることになり、実験への協力要請とともに安全を確保した上での撮影への便宜も図るなど、従来にない広報の体制がとられた。事前からの報道により、計器の設置や爆破時の振動などに関して、地元住民の理解もえられ、大きなトラブルなしに観測が遂行されることとなった。
 これらの探査結果は、地元で開催された「岩手山の火山活動に関する検討会」の場で十分な意見交換が行なわれ、「INS岩手山火山防災検討会」の場でも説明がなされ、岩手山の地下で何が起きているか、防災関係者の間で活動の現状に関する認識の共有化が図られた。また、広く住民の理解を得るべく、学会での発表の前に、地元での報道機関への噛み砕いた説明会も実施した。学会における短い発表や予稿集で専門外の報道関係者に真意の理解を求めることは酷である。特に、研究成果には一定の条件や仮定を基に結論が出されている場合も多く、短絡的な報道で誤解を招き報道関係者と研究者の間でトラブルとなる事例もある(岡田・宇井、1997)。岩手山では、解析精度からして不可能なマグマそのものの存在を把握できるかのような、過度の期待をこめた報道があったりしたものの、総じて正しい情報がやかりやすい形で地域に発信されたものと評価される。

6、 結  言
 岩手山の火山防災対応に関して行なわれた、火山性微動の発生源、地震波の減衰域の推定および山体構造の解明などを目的とした物理探査は、火山活動の現状の把握や今後の可能性にの予測、規制緩和における安全確保対策の構築などに重要な指針を与える役割を果たした。
 岩手山では、物理探査を地域防災の実務にどのように資するかとの観点からの模索が行なわれ、筆者等により、以下のような対応が試みられた。
 1、物理探査の実施にあたっては、防災関係機関が地域の防災に資することの意義を理解し、費用の分担、許認可などでの便宜供与、実施作業への参加協力など互いに協力体制の構築をはかった。
 2、探査結果は、研究者のみの理解に止めず、その意味するところや解析の限界なども含めて、防災関係機関が成果の共有化ができるようはかった。
 3、学会などでの研究成果の公表の前に、地元報道機関への説明会などを開催し、地域住民への火山活動への関心を啓発し理解度を高めることをめざした。
 これらの過程において、岩手で培われてきた、”ひと”と”ひと”のネットワ−ク、「INS岩手山火山防災検討会」の存在は重要な役割を果たした。「岩手山火山防災ガイドライン」の理念として掲げられた、国・県・市町村の連帯責任と関係機関の連携は、物理探査技術を火山防災に有効に活用し、かつ技術を広く世に周知せしめる上で基本となる考えであることが実証されたと考えられる。物理探査技術を地域防災により有効に活用するための岩手山での試みは、今後、他の火山の防災対応に参考となりうるものと期待される。

謝  辞
 本論文ををまとめるにあたり、地熱エンジニアリング(株)土井宣夫博士から有益なご教示をいただいた。本誌の査読者の方々からは貴重なご助言を賜った。深く感謝の意を表する。

参 考 文 献

土井宣夫(2000):岩手山の地質−火山灰が語る噴火史、滝沢村教育委員会
・・・・・土井小枝子・斎藤徳美・野田賢・越谷信・引頭和香・三浦正人・沼宮内忠(2001):岩手火山、1999年〜2001年の表面現象の推移、日本火山学会2001年度秋季講演会予稿集、B30.
・・・・(2002a):岩手火山の1999年〜2001年の噴気活動、岩手山火山活動に関する地域防災総合研究に関わる岩手山火山活動推移の観測報告書、岩手県立大学.
・・・・(2002b):第21回岩手山の火山活動に関する検討会資料.
火山噴火予知連絡会(1999):第82回連絡会「岩手山の火山活動に関する統一見解.
越谷信・大石雅之・野田賢・奥寺勇樹・加藤貴史・滝口真一・三田地喜之・嶋森真紀・斎藤徳美・矢内桂三・平野真一・澤祥・福留高明・佐藤比呂志・大槻憲四郎・長濱裕幸・中村教博・土井宣夫・東郷正美・粟田泰夫・吉岡敏和(1998):1998年9月3日岩手県内陸北部の地震に伴う地震断層、活断層研究、17 、9-20.
Miura S.,Ueki,S.,Sato,T.,Tachibana,K., and Hamaguchi,H.,(2000):Crustal deformetion associated with the 1998 seismo-volcanic crisis of Iwate Volcano, Northeastern Japan, as observed by a dense GPS network, Earth     Planets Space, 52, 1003-1008.
盛岡地方気象台(2001):岩手山の活動経過2001年11月.長濱庸介・佐野剛・山本英和・齋藤徳美・山脇輝夫・田  中聡・浜口博之(2001):人工地震による岩手山内部のP波減衰域の推定、地球惑星関連学会2001年合同大会、Jp-P011.
・・・・・山本英和・田中聡・佐野剛・山脇輝夫・斎藤徳美・浜口博之(2002):人工地震による岩手山内部のP波減衰域の推定(2) 、地球惑星関連学会2002年合同大会、JO32-P007.
Nishimura,T.,Nakamichi,H.,Tanaka,S.,Sato,M.,Kobayashi,T.,Ueki,S.,Hamaguchi,H.,Ohtaki,M.,
  and Sato,H.(2000):Source process of very long- period seismic evevts associated with the 1998 activity of Iwate Volcano, Northeastern Japan, J.Geophys.Res.,105,19135-19147.
岡田弘・宇井忠英(1997):噴火災害と防災・減災、火山  と噴火災害、東京大学出版会、p.113.
大湊隆雄(2001):火山のモニタリング、物理探査、54、455-473.  
斎藤徳美(1999):岩手山火山防災マップ、月刊地球、23、5、317-322.
・・・・(2001):岩手山の監視と防災体制、月刊地球、23、11、754-759.
・・・・・岩手山登山者安全対策協議会(2001):岩手山入山規制緩和にむけた緊急警報システムの構築、日本災害情報学会第3回研究発表大会予稿集、61-71
佐藤峰司・浜口博之(2001):地殻変動観測から推定された1998〜1999年の岩手山のマグマ貫入プロセス、日本火山学会2001年秋季大会講演予稿集、B35.仙台管区気象台(2002):東北地方の火山活動解説資料、3-4.
田中聡・浜口博之(2001):岩手山構造探査から得られた3次元地震波速度構造による震源再決定、日本火山学会2001年秋季大会講演予稿集、B33 .
・・・、宮町宏樹、筒井智樹、松尾のり道、及川純、大森隆雄、宮岡一樹、森健彦、鬼澤真也、山脇輝夫、相澤幸司、浜口博之、岩手山構造探査グル−プ(2001):2000年岩手山人工地震探査−3次元P波速度構造−、地球惑星科学関連学会2001年合同大会予稿集、Jp-022.
Tanaka,S.,Hamaguchi,H.,Nishimura,T.,Yamawaki,T.,
  Ueki,S.,Nakamichi,H.,Tsutsui,Y.,Miyamachi,H.,Matsuowo,N.,Oikawa,J.,Ominato,T.,Miyaoka,k.,
  Onizawa,s.,Mori,T. and Aizawa,K.,(2002):Three-dimennsional P-wave velocity structure of
  Iwate volcano, Japan from active seismic survey. Geophys. Res. lett. 29. 10. 10.1029/
  2002GL014983.
・・・・, Hamaguchi,H.,Ueki,S.,Sato,M.,and Nakamichi,H.,(2002):Migration of seismic activity during the 1998 volcanic unrest at Iwate volcano, northeastern Japan, with reference to P and S wave velocity anomary and crustal deformation, J. Volcanol. Geotherm. Res., 113, 399-414.
東北大学大学院理学研究科(2002):第91回火山噴火予知連絡会資料、1-5.
東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−(2000):第13回岩手山の火山活動に関する検討会資料、1-10.
植木貞人・三浦 哲(2002):1998年岩手山周辺の火山・地震活動、地学雑誌、111、154-165.
Yamamoto,H.,Nakamichi,H.,Tanaka,S.,Nishimura,T.,
  Iwasawa,T.,Hrono,T.,Yamawaki,T.,Ueda,H.,Saito,T.and Hamaguchi,.H.,(2000):Volcanic tremor
  array observation using three-component seismometers at Iwate volcano,Japan.Proceedings World Geothermal Congress 2000,
  1959-1964.

付録 岩手山防災のための主な組織

1、岩手山火山活動対策検討会
設置日:1998年5月22日
役割:臨時火山情報第1号の発表をうけて、緊急につくられた公的委員会。2および3の組織に改組し解消。
事務局:岩手県総務部消防防災課(現、総合防災室)
委員:斎藤徳美(岩手大学工学部教授)、座長
   浜口博之(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センタ−教授)
   土井宣夫(地熱エンジニアリング(株)主席技師長)
   盛岡地方気象台防災業務課長
   岩手県土木部砂防課長

2、岩手山火山災害対策検討委員会
設置日:1998年7月8日 (以降13回開催)
役割:「岩手山火山防災マップ」、「岩手山火山防災ガイドライン」の策定、防災対策全般についての提言および推進。
事務局:建設省東北地方建設局岩手工事事務所(現、国土交通省東北地方整備局岩手工事事務所)・岩手県土木部砂防課(現、県土整備部砂防課)・岩手県総務部消防防災課(現、総合防災室)
委員:斎藤徳美(岩手大学工学部教授)、委員長
   浜口博之(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センタ−教授)
   青木謙一郎(東北大学名誉教授)
   土井宣夫(地熱エンジニアリング(株)主席技師長)
   太田岳史(岩手大学農学部助教授)、現在は井良沢道也(同)
   盛岡地方気象台台長
   盛岡市長、雫石町長、滝沢村長、玉山村長
   西根町長、松尾村長
 第5回委員会から
   細江達郎(岩手県立大学社会福祉学部教授)
   首藤伸夫(岩手県立大学総合政策学部教授)
   建設省(現、国土交通省)岩手工事事務所所長岩手県総務部長
   岩手県土木部(現、県度整備部)部長
   岩手県盛岡地方振興局長

3、岩手山の火山活動に関する検討会
設置日:1998年10月8日、(以降22回開催)
役割:観測情報の収集、火山活動の検討、地元自治体や住民への学術的助言や説明。
事務局:岩手県総務部消防防災課(現、総合防災室) 委員:斎藤徳美(岩手大学工学部教授)、座長
   浜口博之(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センタ−教授)
   青木謙一郎(東北大学名誉教授)
   平林順一(東京工業大学教授)
   土井宣夫(地熱エンジニアリング(株)主席技師長)
   盛岡地方気象台台長

4、岩手ネットワ−クシステム(INS)岩手山火山防災検討会
設置日:1998年5月16日、(以降40回開催)
役割:研究者、自治体の防災担当者、報道機関、防災関連企業、住民が忌憚のない意見交換を行い、人と人のネットワ−クを築く。個人の自由参加による任意組織。INSには31の研究会があり、千人以上の会員が活動しているが、その中の「地盤と防災研究会」の分科会として設立。
事務局:岩手大学工学部地下計測学研究室
    代表幹事、斎藤徳美(岩手大教授)
参加機関:東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センタ−、岩手大学、岩手県立大学、盛岡地方気象台、国土交通省岩手工事事務所、国土地理院東北測量部、盛岡森林管理署、陸上自衛隊岩手駐屯地、岩手県警察本部、岩手県(総務部・県土整備部・商工労働観光部、生活環境部、)、盛岡市、雫石町、滝沢村、玉山村、西根町、松尾村、岩手県観光協会、日本道路公団、JR東日本旅客鉄道(株)盛岡支社、(株)NTT盛岡支社、東北電力(株)岩手支店、地熱エンジニアリング(株)、岩手県農業共済組合連合会、全労済、岩手県山岳協会、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、テレビ岩手、岩手めんこいテレビ、岩手朝日テレビ、岩手日報社、各全国紙盛岡支局、防災・情報関連機器メ−カ−、など、40機関余。