3.火山活動および防災対策の経緯
(3)観測網の強化と防災体制構築の模索
岩手山では1732年の焼走り溶岩流の噴出以来大きな噴火がないため、具体的な火山噴火対策は皆無であり、県民の火山に対する関心や知識もほとんど培われていなかった。そのため、住民には何が起きるのかといった不安がまた行政においてはどのような対策を講ずるべきかの戸惑いが強く、具体的な防災体制の立ち上げはスム−ズには行なわれなかった。
火山災害を軽減するには、@火山活動の監視、A災害予測地域の想定、B緊急対策の立案と試行、が必要とされている。火山活動の監視については、東北大学地震・噴火予知研究観測センタ−が1981年以降岩手山周辺に定常観測点の設置を進めていたが、火山性地震の頻発前後には20数ヶ所の臨時観測点を増強した。気象庁も地震計・空振計など臨時観測点を設置、工業技術院地質調査所、建設省国土地理院などの国の機関も火山監視の体制の準備を始めるなど、監視体制は緊急に整備が図られた。
一方、地域防災との視点からもっとも早く対応を図ったのは、岩手県内の産学官の研究交流組織である「岩手ネットワ−クシステム(INS)」の「地盤と防災研究会」で、98年5月16日に、分科会として「INS岩手山火山防災検討会」を発足させ、防災関連機関との連携を図って、上記対策の具体的推進の強力な旗振り始めた。これに呼応して、岩手県は5月22日に専門家を中心とする「岩手山火山活動対策検討委員会(委員長:斎藤徳美岩大教授」(事務局:総務部消防防災課)、岩手山周辺の行政機関が情報交換するための「岩手山の火山活動に関する関係市町村等連絡会議(委員長:清水真一郎消防防災課長)を立ち上げ、また、防災を主眼とした災害予測図作成の協議も始まった。