3.火山活動および防災対策の経緯
(12)「岩手山の火山活動に関する検討会」の設置


 雲仙普賢岳の噴火災害対応では、地元島原市に九州大学雲仙火山観測所があり、火山活動の監視と予測に中心的役割をはたした。岩手県には火山観測施設はもちろん火山学を専門とする講座もない。もっとも緻密な観測体制をとっている東北大学地震・噴火予知研究観測センタ−は仙台市と距離的に離れている。火山学の最高権威の集団ともいえる火山噴火予知連絡会は東京の気象庁に事務局があり、噴火時に臨機応変な対応が十分に出来かねないことも危惧される。

 そこで、地元研究者を中心に、地元でなければ出来ない山体の監視、各地の観測機関との連携しての観測情報の収集、地元行政や住民へのわかりやすい状況説明、防災上の対応に対する行政への助言などを目的として、「岩手山の火山活動に関する検討会(座長:斎藤徳美岩大教授)」が、98年10月8日に「岩手山火山活動対策検討委員会」を改組する形で立ち上げられた。メンバ−は、地元での岩手山噴火史研究の第一人者である土井宣夫氏、火山監視の中心的立場にある東北大学地震噴火予知研究観測センタ−の浜口博之教授などである。さらに、盛岡地方気象台の野口晉孝台長が委員に加わっているが、気象庁に籍を置く責任ある立場の人が、個人的な含みをもたせたにしてもこのような委員会で議論に加わるのは異例のことである。地元の気象台が、一方的な火山情報の発表だけでなく、地域防災へ貢献するとの強い認識に基づく連携の姿勢と受けとられよう。

 火山情報を一元化する火山観測施設が地元にない欠点を補うため、緊急時に情報交換や行政への助言を行なうために、1999年1月21日に、県によりテレビ会議システムが導入された。回線は、盛岡地方気象台、東北大学地震・噴火予知研究観測センタ−、岩手大学工学部、岩手県消防防災課の災害警戒本部をつなぎ、4者が画像でデ−タを交換しながら協議が可能であり、訓練時の他に火山性地震の頻発時などに随時活用されている。

 なお、火山噴火予知連絡会には、浜口教授が正規の委員、土井氏が臨時委員として出席しているが、気象庁に要請して、斎藤県検討会座長が1998年10月13日の第79回予知連絡会から、また、その後盛岡地方気象台長もオブザ−バ−として出席している。一方、99年8月24日には、予知連の井田嘉明会長、気象庁の小宮学火山課長等が岩手山の視察に来県、同11月16日には盛岡地方気象台で予知連の拡大幹事会を開催するなどして、気象庁本庁や予知連との意志の疎通を密にすることを図っている。


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